影
- 2000 x 2000
- コンクリート、石、レンガ、陶器、木、プラスチック、 ガラス、缶、銅
- 2023
撮影:東間嶺
長崎に落とされた原子爆弾の爆心地は、現在では「平和公園祈りのゾーン 中心地地区」として整備されており、市民からは「爆心地公園」と呼称されている。落下の中心地には標柱として黒御影石の碑が立てられており、公園に隣接する下の川沿いの一角には、地中 2m ほどに位置する「被爆当時の地層」が護岸を利用してガラス越しに公開されている。そこには破壊された建物の瓦やレンガ、焼けた土や木片、溶けたガラスや陶器などが埋没した状態を見ることができる。公園内には、その他にも移築された旧浦上天主堂の遺壁の一部、下の川の親水護岸などがあるが、それ以外に当時の惨状を物語る被爆遺構はなく、端正に整備された公園には、富永直樹氏の制作による被爆 50 周年記念事業碑や外国人原爆犠牲者追悼碑、追悼電鐵原爆殉難者の碑など様々な碑が建てられている。 本展に展示されている物は、その場所の地表に在りながらその存在を明示、あるいは言及されることのない見過ごされる物たちである。いつどのようにしてその場所に集められたのか不明であり、その地に在りながらその出来事を物語ることのない物たちである。公園を隅から隅まで歩き、手に取ったこれらの物に自分自身の因果を重ねながら、時間の断層から垣間見える新たなイメージの現れを探る。
これらの物は会期終了後、採取地に返却する。
______ 酒井 一吉