浦上天主堂再現プロジェクト

projection
2015

「幻の原爆ドーム」とも呼ばれる原爆によって倒壊し、一定期間のみ存在した旧浦上天主堂。その旧天主堂を同地にほぼ同じ形状で建て替えられた現在の天主堂の正面壁に旧天主堂の原寸大の映像を投影し再現したプロジェクト。旧天主堂が残存していればヒロシマの原爆ドームと同様に世界遺産になっていたことは想像に難くない。それどころか、東洋の奇跡と呼ばれた隠れキリシタンの歴史、そしてその信仰の地に建った東洋一の大聖堂を焼き払ったことへのインパクトはヒロシマの原爆ドームの比ではないかっただろう。

終戦から70年、被爆者の平均年齢が80歳を超え、被爆体験の継承が危ぶまれるこれからの時代を考える「場」の形成を試みる。そして鎖国時代から諸外国との唯一の窓口としての役割を担い、キリスト教の伝来から禁教下での激しい弾圧に耐え、禁教が解かれたのちにレンガひとつ一つを地道に買い揃え、年月をかけ建てられた信徒念願の天主堂、そしてその浦上の地にアメリカによって落とされた原子爆弾。そしてアメリカにとって不都合なその事実を抹消するかのように建て替えられた現天主堂。そしてその象徴的な遺構の不在によって生まれた巨大な公共彫刻。日本初の姉妹都市の提携。長崎における原爆の表象は、日本の近代化に翻弄されたこの地の400年に及ぶ歴史の表象に他ならない。